男性不妊患者の多くはうつ状態。

男性不妊外来を訪れる患者さんは、「ヴィトックスαを楽天で頼まない自分のせいで子どもが持てない」「妻につらい不妊治療をさせている」など、いたたまれない気持ちを抱えている。

その気持ちを推しはかれればと思い、ある時期、患者さんにうつ状態を評価するスコアを記入してもらったことがある。

直前の1週間の様子について、「ほとんど、もしくはまったく感じることがなかった」「たまには,もしくは少々は感じることがあった」など4つのスコアから選んで回答していくもので、質問は「食事をとる気になれなかった。

食欲がなかった」「落ち着いて睡眠できなかった」「悲しさを感じた」「将来に希望を持つことができる」「幸福感を感じることがあった」など、多岐にわたる。

結果はほとんど( 95 %)の人にうつ症状が見られ、症状が深刻な人も少なくなかった。

想像をはるかに超える苦悩を患者さんは抱いているのだと、あらためて実感する出来事であった。

ほとんどが夫婦で連れだって来院し、一緒に不妊治療に取り組もうという意識の高いカップルだ。

診察時の様子からもお互いを思いやる様子が垣間見え、いわゆる「仲のよい」カップルである。

しかし外見的には元気そうに見えても、その心はボロボロに傷ついているのだ。

「男性不妊」というレッテルが,そうさせるのか。

もともとの気質で、そうなりやすいのか。

いや、たとえ強靱な心の持ち主でも「男性不妊」という事実を目の前に突きつけられると、心理的に追い詰められるだろう。

先ほどから述べているように不妊の半数は男性側に何らかの問題がある。

だが、その程度はさまざまで、現在は対策の選択肢も広がっている。

ほんの少しの医療のサポートで子どもを授かる人も多い。

だから、「男性不妊」と診断されても、決して絶望しないでほしい。

僕は専門的な立場から全力でおふたりを応援する。

まず男性不妊は特別なことではなく、現代日本ではありふれた問題だということを知ってほしい。

そして、僕ら医療者は、それを社会に周知していく必要がある。

また、間違った検査方法なども是正していかなくてはいけない,説明不足ゆえに患者さんがいたずらに不安を抱いたり,本来とは違う検査結果を提示していわれのない男性不妊患者を増やさないためにも。